やえすの棟梁

なぜ、やえすは棟梁を育てているのか?

日本の棟梁の現状

 家づくりを直接的に担う現場の職人たち、中でも「棟梁=棟(むね)と梁(はり)という、建物を支える重要な構造部分に例えた、家づくりを行う職人たちを統率する長」は中心的な存在であると考えます。しかし近年、棟梁を始めとした現場で施工を行う専門技能者の高齢化と、若年技能者の減少・能力不足が一層深刻化してきています。
 1980年に約94万人いた大工人口は、2005年には約54万人に減少、2010年には40万人を切っています。さらに東京オリンピックが開催される2020年には、30万人弱まで落ち込むと推定されています。

日本の棟梁の現状(イメージ) 大工就業者数の推移

棟梁の存在意義

 日本の職人文化・物づくり文化が生んだ木造軸組住宅は、気候風土に適した形態・仕様・融通性に富んだ間取りや空間の構成、家族がお互いに気遣いながら暮らせる仕組み、長寿命化のための補修や増改築の容易さ、釣り合いの取れた意匠の美しさなど、優れた特徴を数多く有しています。その長所を現代の住まいに活かし、住む人が心豊かに暮らす空間=家づくりを行うためには、日本の職人文化・物づくり文化の象徴である「棟梁」の存在が必要不可欠であると考えます。
 しかしながら、前述の通り伝統的な木造軸組住宅の担い手である高度な技能・技術を持った「棟梁」は数の減少・高齢化が進み、その技能・技術の継承が困難になっています。

棟梁の存在意義(イメージ)

家づくりの変化

 昔の家づくりは、すべて「棟梁」に任されていました。どんな家をいくらでつくるのか、屋根・電気・設備・左官など様々な職人さんたちに指示を出し、すべての工事について責任を持って家づくりを行っていました。そして家が完成した後も、一声掛ければすぐに駆けつけて相談に乗ってくれる。そんな「棟梁」がたくさんいました。
 しかし、現代の日本の家づくりは大きく変わってしまいました。効率化が優先され、短期間で一定の品質の住宅が供給できるようになった反面、その施工過程はいくつもの細かい工事に分業化され、「棟梁」という家づくりをしていた存在は、「大工」という職人の一人に変わっていきました。その結果、「家づくりの職人たちを統率する長」から「多くの下請け職人のひとり」といったイメージが広がり、その社会的重要性が認識されず将来性が見えないことから、若者の職人離れが進んでいます。

家づくりの変化(イメージ1)

 その後、2008年のリーマンショックによる建設投資の急激な減少、それに伴う価格競争の激化が分業化された職人たちの更なる収入の低下を招き、多くの職人たちが転職・引退していきました。

 そして2011年に起こった東日本大震災の震災復旧で被災地の職人不足が一気に深刻化。2012年に入り本格的に復興需要が始まり、消費税増税前の駆け込み需要と合わせて建築投資は急増、2013年には前年度比10.2%増の48兆7200億円(見通し)となり、リーマンショックがあった2008年を上回りました。また、2014年の建築投資は48兆4700億円(見通し)と前年度とほぼ同じ数字で推移しています。しかし、一度転職・引退してしまった職人は戻らず、全国的に職人不足は深刻化、需要と供給のバランスが崩れ、労務費が高騰し職人の奪い合いをしている状況です。
 このような状況では、伝統的な技術の継承はおろか、私たちが目指す「住む人が心豊かに暮らす家づくり」はとても叶いません。どんなに優れた設計者や現場監理者がいても、実際に身体を動かし、その手でつくり上げていく職人がいなければ、家づくりは完成しないのです。

棟梁の復活へ

 2012年4月1日、私たちは「やえす匠の会」を立ち上げました。住む人の想いと私たちつくり手の想いを詰め込んだ、「やえすの家」だけをつくってくれる棟梁。そして、その背中を見て、どんなに小さなことでも吸収しようと毎日必死に努力する弟子たち。
 昔の棟梁たちは、技術の継承のためには見返りを求めず、弟子の育成に努めてきました。しかし、現在では自分の生活や約束された工期を守ることに精一杯で、弟子の育成を行う余力はありません。
 だから私たちは、大工を目指す若者たちを社員として迎い入れ、やえすの家づくりに対する想いに賛同してくれる棟梁たちと力を合わせて、未来の棟梁を育てることにしました。

 伝統的な技術を継承しつつ、常に変化し続ける現代の施工技術を身につける。そして、それらすべては家づくりに携わる多くの職人たちの長として、そこに住まう人の想いを形にするため。

 日本の将来を担う子供たちが憧れる、「カッコイイ棟梁」の復活のために。家づくりを通したひとづくりを目指し、私たちは尽力させていただきます。

棟梁の復活へ(イメージ)

やえすの棟梁たちが語る。

棟梁は語る

自分が大工の世界に入った頃は、親方から何も教えてもらえませんでした。
いわゆる「技は見て盗め」の時代だったからね。
しかし、今や時代は変わった。
やえすの家に関わって長くなりますが、自社大工の育成に関わってからは数年。
大工仕事以上に、人を育てる難しさを感じています。
しかし、大切なのは「普通に仕事をやっていくこと」。
図面に沿って、やるべきことを工期のなかでしっかりやっていく。
でも、この普通をちゃんとやるのが難しい。手を抜いちゃ普通はできない。
見えないところに粗がでると長く住めるいい家にはならない。
だから、普通通りに日々を積み重ねていくことが大事だね。

[棟梁とは…]

家づくりにおいて、職人たちを統率する中心人物のこと。棟(むね)と梁(はり)という、建物において重要な構造を例えに用いた言葉であり、尊称として扱われます。
やえすでは、やえすの家づくりのみを行う「専属棟梁制度」のもと、「家づくり」を通した「人づくり」をお願いしています。

棟梁は語る(イメージ)

平成23年に専属棟梁になってから、毎日弟子たちに発破を掛けています。
昔弾いていた、アコースティックギターをまた始めようかと思っています。

弟子は語る1

もともとは、家守り課に在籍していましたが、3年前から自社で
大工を育てるということになり、中島副社長の後押しもあって、大工を志しました。
技術系の仕事は得意でしたが、実際に現場に入ってみると難しいことばかり。
とりわけ細かなところの「おさまり」をどれだけ美しく仕上げられるかが
家の仕上がりを左右するので気を配っています。
担当する物件の地鎮祭や棟上げは必ず参加しています。
また、家づくりを一緒に楽しんで欲しいので、工事途中の現場に
お客さまがお見えになったときは、「今はこういう作業をやっています」と、
なるべくわかりやすく工程を説明するようにしています。
社員なので休みはしっかり確保されているのですが、
お客さまにきちんと期日までにお引き渡すため工程のことを考えると
気持ち的にはゆっくり休めないこともありますね。笑
将来は、技術はもちろん心構えなど棟梁から受け継いできたものを
きちんと次の世代に受け継いでいきたいと思います。

弟子は語る1(イメージ)

休日は、愛犬であるパグの「ぷー」と一緒に散歩をしています。
とても癒されます!

弟子は語る2

地元の先輩が大工の仕事をしているのですが、その仕事に対する真摯な姿勢に影響されて、自分も建築の専門学校へ。最初は親父に反対されたのですが、今では「早く一人前の大工になれ」って応援してくれる、一番の理解者です。
九州八重洲には、入社前にインターン研修でお世話になりました。その時現場にお邪魔したのですが、社員と間違われて柄本棟梁に怒られたことがあって。その後、まだ社員じゃなかったねって謝ってくださいました(笑)その時の現場の楽しさがずっと忘れられなくて、ほかの会社を受けることなく、入社を決意しました。
現場では、まだ何も役に立てていないと思います。先輩たちから教えてもらうことばかり。そんな先輩たちを支えていけるように、もっともっと多くのことを覚えて、早く現場で役に立てる存在になりたいです。
仕事中は厳しくて怖い先輩たちですが、休憩中には冗談を言い合ったり、秘密のテクニックを伝授してくれたり…本当に頼れる存在です。

弟子は語る2(イメージ)

初めて教えてもらった仕事は「墨出し」。専門学校では実技がなかったので、何もかもが新鮮で毎日が楽しいです!

一邸一品の贈りもの

 やえすでは、完成したお家をお引き渡しさせていただく際に、「一邸一品」という贈りものをご準備しています。家づくりを行った棟梁が、その家に住むお客さまのことを想い、ひとつひとつ手づくりした心のこもった贈りものです。
 小さなお子さまがいらっしゃるご家庭には、小さな椅子をお贈りしたり、おしゃれな雑貨が好きな奥さまのために、飾り棚をおつくりしたり…。一邸一邸、贈る品もさまざまです。
 長い家づくりの工程の中で、お客さまと一緒につくりあげてきた想い出を形にした、とっておきの「逸品」です。

一邸一品の贈りもの(イメージ1) 一邸一品の贈りもの(イメージ2)
一邸一品の贈りもの(イメージ3)